「認知症対策に家族信託か成年後見か、どちらを選べばいいか迷っている」
家族信託と成年後見(後見人制度)の違いを実際に調べてみると、仕組みと向いているケースが根本的に異なることがわかります。判断するには費用・自由度・誰が管理するかの3点を比較するのが最短です。
最高裁判所が毎年公表している「成年後見関係事件の概況(令和7年版)」を開いてみると、令和7年の後見関係申立件数は前年比3.2%増と右肩上がりで推移しており、制度の利用が増え続けていることがわかります。その一方で、家族信託との使い分けを知らないまま申立てに至るケースも少なくありません。費用・自由度・管理者の観点から整理します。
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最大の違い:「いつ機能するか」と「誰が管理するか」
| 家族信託 | 成年後見(法定後見) |
| 機能するタイミング | 契約後すぐ(認知症前から) | 認知症後(判断能力低下後に申立て) |
| 管理者の決め方 | 自分で選ぶ(受託者) | 裁判所が選ぶ(後見人) |
| 家族が管理できるか | ◎ 子どもが受託者になれる | △ 第三者が選ばれることも |
| 裁判所の関与 | ✗ なし | ◎ 常に監督下 |
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費用の比較
東京家庭裁判所が公表している「成年後見人等の報酬額のめやす」を確認すると、後見人の基本報酬は月2万円が目安とされています。管理財産が1,000万円超5,000万円以下の場合は月3〜4万円、5,000万円超になると月5〜6万円と段階的に上がります。つまり、財産規模によっては月2〜6万円の報酬が認知症期間中ずっと発生し続けます。
一方、家族信託の初期費用(設計・公証費用)は40〜90万円程度かかりますが、その後の継続的な報酬は原則かかりません。10年スパンで計算すると、後見人報酬の累計が家族信託の初期費用を大幅に上回るケースが多くなります。
| 家族信託 | 法定後見 |
| 初期費用 | 40〜90万円 | 1〜30万円(申立てのみ〜専門家依頼) |
| 継続費用(月) | 原則なし | 2〜6万円(後見人報酬) |
| 10年間のトータル | 40〜90万円(設計費のみ) | 240〜720万円(後見人報酬) |
長期的には家族信託の方が圧倒的に安くなります。 短期(5年以内)では法定後見の方が初期コストが安い場合があります。
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財産管理の自由度の比較
裁判所のページで法定後見の仕組みを確認すると、後見人が不動産を売却したり定期預金を解約したりする際には、原則として家庭裁判所の許可が必要であることが記載されています。生前贈与などの積極的な節税行為も原則認められません。
家族信託では、信託契約の範囲内であれば受託者(子どもなど)が裁判所の関与なく財産を管理・処分できます。この自由度の差が、相続税対策を継続したい家庭にとって決定的な違いになります。
| 家族信託 | 法定後見 |
| 不動産売却 | ◎ 受託者が判断(裁判所不要) | △ 原則裁判所の許可が必要 |
| 生前贈与の継続 | ◎ 信託契約の範囲内で可能 | ✗ 原則不可(積極的な節税はNG) |
| 不動産のリフォーム | ◎ 受託者が判断 | △ 裁判所が判断に関与 |
| 定期預金の解約 | ◎ 受託者が判断 | △ 後見人が管理(制限あり) |
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身上監護(医療・施設入居の決定)の比較
裁判所の成年後見制度説明ページを確認すると、後見人は医療行為への同意や施設入所の契約など「身上監護」を担う権限を持つと明記されています。家族信託の受託者にはこの権限がありません。
| 家族信託 | 法定後見 |
| 医療同意 | ✗ 受託者にはない | ◎ 後見人が担う |
| 施設入所の契約 | ✗ 受託者にはない | ◎ 後見人が担う |
家族信託の受託者は「財産管理」だけを担います。 医療・施設の決定(身上監護)は別途、任意後見や成年後見と組み合わせる必要があります。
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どちらを選ぶべきか:判断基準
| 状況 | おすすめ |
| 不動産がある・相続税対策を続けたい | 家族信託 |
| すでに認知症が進んでいる | 法定後見(家族信託は設計不可) |
| 身上監護(施設入所の契約)が必要 | 任意後見 or 法定後見(家族信託と組み合わせ可) |
| 長期的な費用を最小限にしたい | 家族信託 |
| すぐに財産管理が必要(緊急) | 法定後見(家族信託の設計には時間がかかる) |
| 第三者に管理を任せたい | 法定後見 |
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家族信託と任意後見の組み合わせが最強
裁判所の資料を読み進めると、法定後見と任意後見の違いも見えてきます。任意後見は判断能力があるうちに自分で後見人を指定できる制度で、家族信託と組み合わせると財産管理と身上監護の両方をカバーできます。
「家族信託 + 任意後見」の組み合わせ:
- 家族信託 → 財産管理(受託者=子どもが柔軟に管理)
- 任意後見 → 身上監護(自分で選んだ後見人が医療・施設を決定)
この組み合わせにより、財産管理の自由度(家族信託)と身上監護の確実性(任意後見)を両方確保できます。
初期費用は合計70〜120万円程度と高くなりますが、長期的には最もバランスが良い選択肢です。
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【事例】田中さん(65歳)が家族信託を選んだ理由
田中さん(65歳・東京都在住)は79歳の母が軽度認知症と診断された段階で動きました。財産は自宅(評価額3,000万円)と定期預金800万円。
「成年後見を検討したが、月3万円の後見人報酬が10〜15年続くと思うと。家族信託で自分(息子)が管理者になれる選択をした。設計費用80万円は高いと思ったが、母の財産で払えた。後見報酬が15年で540万円かかることと比べると圧倒的に安い」と話します。
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よくある質問
認知症になってからでも家族信託はできますか?
判断能力が残っている「軽度認知症」の段階であれば可能です。公証人が意思確認できるレベルが条件です。重度認知症になって意思確認ができなくなると家族信託は設計できません。その場合は法定後見のみになります。
家族信託は一人で設計できますか?
法律上は可能ですが、不動産・税務・金融機関対応を考えると司法書士や弁護士への依頼が現実的です。自己設計は後から問題が出やすく、修正費用が別途かかることがあります。
後見人の変更はできますか?
法定後見では、後見人に不正行為などがない限り変更は困難です。家族信託では受託者の変更条項を契約書に入れることができます。
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まとめ
東京家庭裁判所の報酬めやすと最高裁判所の概況資料を確認してわかったのは、家族信託と後見人の最大の違いは「費用の長期コスト」と「財産管理の自由度」だということです。認知症になる前に動けるなら家族信託が有利。すでに認知症が進んでいるなら法定後見しか選択肢がありません。
どちらが合っているかは家族構成・財産内容・認知症の進行度によって異なります。まず司法書士や弁護士に相談することをおすすめします。
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最後まで読んでいただきありがとうございます。
家族信託と後見人の選択は、知っているかどうかだけで、結果が大きく変わります。
難しい制度のなかで、正しい情報を手に入れることがどれほど大切か、日々の記事執筆を通じて痛感しています。
この記事が、あなたの生活を少しでも楽にするきっかけになれば嬉しいです。
これからも、あなたの生活防衛に役立つ情報を発信し続けます。
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