「家族信託って聞いたことあるけど、本当にいいの?」「デメリットはないの?」
そんな疑問を持つ方が多いのは当然です。家族信託は確かに強力な制度ですが、万能ではありません。
==この記事では、家族信託のメリットとデメリットを正直に比較します。== どちらが向いているかは家庭の状況によって異なります。「とりあえず家族信託」ではなく、判断材料を持って選べるようになってください。
家族信託とは何か、30秒で理解する
家族信託とは、財産の「管理・運用・処分」の権限を、信頼できる家族(子どもなど)に移す仕組みです。
委託者(財産の持ち主・親など)が受託者(管理する人・子どもなど)に財産を預け、受益者(利益を受ける人・多くは親本人)のために管理・運用を続けます。
特徴は3つ:
- 認知症になっても受託者が財産を動かせる
- 不動産の売却・賃貸・修繕も受託者が判断できる
- 裁判所の監督なしに家族で管理できる
家族信託の5つのメリット
① 認知症後も財産を自由に動かせる
家族信託の最大のメリットです。信託契約を結んだ後に親が認知症になっても、受託者(子ども)は不動産の売却・口座管理・施設費の支払いを続けられます。
成年後見制度では、不動産の売却に裁判所の許可が必要で、数か月かかる場合もあります。家族信託はこの制約がありません。
② 相続税対策・生前贈与を継続できる
成年後見人は積極的な相続税対策(生前贈与・不動産の組み換えなど)を原則として行えません。一方、家族信託では信託契約の範囲内で受託者が柔軟に動けます。毎年の暦年贈与(110万円の非課税枠)も継続可能です。
③ 家族が後見人になれる
成年後見制度では、家庭裁判所が後見人を選任します。第三者(弁護士・司法書士)が選ばれることも多く、家族の意向が反映されにくい場合があります。家族信託なら信頼できる子どもが受託者として直接管理します。
④ 月々のコストがほぼかからない
成年後見制度では後見人報酬が毎月2〜6万円程度発生し、本人が亡くなるまで続きます。10年間では240〜720万円になる計算です。家族信託は初期費用がかかりますが、継続コストは原則ゼロです。
⑤ 二次相続まで設計できる
家族信託では「父が亡くなったら長男に、長男が亡くなったら孫に」という連続する相続先を事前に指定できます。これは遺言書では実現が難しい(効力が一代限り)仕組みで、家族信託独自のメリットです。
家族信託の5つのデメリット
① 初期費用が高い
家族信託の設定には、司法書士への設計・書類作成費用・公正証書費用・不動産登記費用など、総額40〜90万円程度がかかります。複雑なケースでは100万円を超えることも。
シンプルな成年後見の申立て費用(1〜10万円)と比べると、初期コストは大きく異なります。
② 信託できない財産がある
家族信託で管理できるのは財産的な価値のあるもの(不動産・預貯金・株式など)に限られます。一身専属的な権利(年金受給権・国民健康保険など)は信託できません。また、農地は農地法の規制により信託が難しい場合があります。
③ 身上監護(介護の決定)はできない
受託者は財産管理はできますが、医療・施設入居の契約といった「身上監護」の代理権はありません。これらが必要な場合は任意後見や成年後見の併用が必要です。
④ 信託口口座の開設が難しい場合がある
家族信託の運用には「信託口口座」の開設が推奨されますが、対応している金融機関が限られており、開設に時間がかかる場合があります。普通口座で代用するケースもありますが、管理が複雑になります。
⑤ 専門家なしでの設計ミスリスク
家族信託の契約書を自分で作成することも法律上は可能ですが、税務上の問題(贈与税・不動産取得税)を見落とすリスクがあります。特に「他益信託」(委託者と受益者が異なる)では課税問題が発生することがあります。
成年後見・任意後見との比較表
| 家族信託 | 任意後見 | 法定(成年)後見 | |
| 開始時期 | 今すぐ契約・即効力 | 今契約・発効は判断力低下後 | 判断力低下後に申立て |
| 財産管理 | ◎ 受託者が自由に動ける | ○ 後見人が管理 | △ 裁判所の監督下 |
| 身上監護 | ✗ 受託者にはない | ○ 後見人が担う | ○ 後見人が担う |
| 初期費用 | 40〜90万円 | 3〜5万円 | 申立1〜10万円 |
| 継続費用 | 原則なし | 月1〜3万円(後見監督人報酬) | 月2〜6万円(後見人報酬) |
| 相続税対策 | ◎ 可能 | △ 制限あり | ✗ 不可 |
| 不動産売却 | ◎ 受託者が判断 | ○ 後見人が判断(裁判所許可必要な場合あり) | △ 原則裁判所の許可が必要 |
| 家族の関与 | ◎ 家族が直接管理 | ○ 家族が後見人になれる | △ 第三者が選ばれることも |
家族信託が向いている人・向いていない人
| 向いている | 向いていない |
| 不動産を持つ親がいる | 初期費用が払えない |
| 相続税対策を続けたい | 財産が少なく費用対効果が低い |
| 後見費用の長期負担を避けたい | 身上監護の代理権が必要(後見と併用必要) |
| 二次相続まで設計したい | 親族間で信頼関係がない |
| 親が認知症になる前に準備したい | 農地がメインの財産(信託が難しい) |
「不動産がある・親が比較的元気・子どもとの信頼関係がある」なら家族信託が最有力候補です。
【事例】山田さん(64歳)が家族信託を選んだ理由
山田さん(64歳・千葉県在住)の母親(88歳)が軽度認知症の診断を受けました。母名義の自宅(評価額2,000万円)と定期預金1,200万円があります。
最初は成年後見制度を検討しましたが、専門家から「後見人報酬が毎月3万円、10年で360万円超。しかも不動産売却に裁判所の許可が必要」と聞いて方針を変えました。
家族信託の設定費用は司法書士報酬・公正証書・登記をすべて含めて82万円。「高く感じたけど、10年の後見報酬360万円と比べれば278万円の節約。それより自分が主体的に動けることが大きかった」と語ります。
よくある質問
家族信託は誰でもすぐ使えますか?
委託者(親)に「信託の内容を理解できる判断能力」が必要です。認知症が進んで意思確認ができない状態になると、公証人が公正証書の作成を断ることがあります。「まだ大丈夫」と思っているうちに相談することが重要です。
家族信託で贈与税はかかりますか?
自益信託(委託者=受益者)では、所有権が受託者に移転しても原則として贈与税は発生しません。ただし受益者の設定によっては課税対象になるため、税理士への確認をおすすめします。
家族信託と遺言書の違いは?
遺言書は本人が亡くなった後に効力を発揮します。家族信託は生前から効力を発揮し、認知症後も継続します。また遺言書の効力は一代限りですが、家族信託は二次相続以降の設計も可能です。
まとめ
家族信託は、初期費用がかかる一方で、長期的には後見制度よりコストを大幅に抑えられます。不動産を持つ家庭では、受託者が柔軟に動ける点で圧倒的なメリットがあります。
判断能力があるうちにしか設計できない制度です。 迷っているなら、まず司法書士か専門家に一度相談することをおすすめします。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
家族信託の問題は、知っているかどうかだけで、結果が大きく変わります。
難しい制度のなかで、正しい情報を手に入れることがどれほど大切か、日々の記事執筆を通じて痛感しています。
この記事が、あなたの生活を少しでも楽にするきっかけになれば嬉しいです。
これからも、あなたの生活防衛に役立つ情報を発信し続けます。
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