都道府県別・老人ホームの費用はいくら?地域差の実態と費用を抑えるポイントを調べました

老人ホームへの入居を考えはじめたとき、「いったいいくらかかるのか、見当もつかない」と思っていませんか。

パンフレットを取り寄せてみたら、月20万円、30万円という数字が並んでいて、思わず目を疑った方もいるかもしれません。かといって安い施設を選べばよいのかというと、そう単純な話でもない。どの地域に住んでいるか、どの種類の施設を選ぶかによって、同じ「老人ホーム」でも費用はまったく異なります。

厚生労働省の「介護サービス施設・事業所調査」や公益財団法人生命保険文化センターの調査を調べてみると、都道府県によって月額費用の平均値には2倍近い開きがあることがわかります。東京都と地方では、同じ介護度・同じサービス内容でも、毎月の自己負担額に数万円の差が生まれることも珍しくありません。

この記事では、施設の種類別・都道府県別の費用データを一次情報をもとに整理し、費用を抑えるための制度や手順をわかりやすくまとめました。「どの施設を選べばいいか」「今の収入で払えるのか」という疑問に、具体的な数字と制度の仕組みから答えていきます。


老人ホームの費用の全体像をつかむ

まず「老人ホーム」という言葉の範囲を整理しておきます。

厚生労働省の介護保険法の定義を確認すると、介護保険施設は大きく3種類に分かれています。「特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)」「介護老人保健施設」「介護医療院」です。これらとは別に、民間が運営する「有料老人ホーム」「グループホーム」「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」があります。

一般的に「老人ホームに入れたい」と相談されるケースで検討されるのは、この5〜6種類のうちのどれかです。種類によって費用の仕組みがまったく異なるため、最初に全体像を把握しておくことが大切です。

月額費用の主な内訳

老人ホームの月額費用は、以下の4つに分解できます。

費用項目 内容 備考
介護保険の自己負担 介護サービス費の1〜3割 収入・資産によって割合が変わる
居住費(部屋代) 施設のタイプ・部屋の種類による 個室か多床室かで大きく異なる
食費 1日3食の費用 施設により月3〜6万円程度
その他の加算費用 日常生活費・おむつ代など 施設ごとに異なる

この4つを合計したものが、毎月の実際の出費になります。「月10万円」という数字が施設のパンフレットに書いてあっても、実際には「自己負担率が2割だった」「個室だから居住費が高かった」などの事情で、想定と大きく変わることがあります。


施設の種類別・月額費用の目安

施設の種類によって、費用の水準はかなり異なります。厚生労働省の介護サービス施設・事業所調査や生命保険文化センターの「生活保障に関する調査」のデータをもとに、種類別の目安をまとめました。

施設の種類 月額費用の目安 入居条件
特別養護老人ホーム 6万〜15万円 要介護3以上(原則)
介護老人保健施設 8万〜13万円 要介護1以上(在宅復帰を目指す方)
介護医療院 8万〜15万円 医療ニーズが高い要介護者
介護付き有料老人ホーム 15万〜35万円 要介護1以上が多い
住宅型有料老人ホーム 10万〜30万円 自立〜要介護まで幅広い
サービス付き高齢者向け住宅 10万〜25万円 自立〜軽度介護
グループホーム 10万〜18万円 認知症の方(要支援2以上)

公的施設である特別養護老人ホームは費用が低めですが、全国的に待機者が多く、入居まで数年かかるケースもあります。民間の有料老人ホームは費用が高めですが、入居しやすい傾向があります。

特別養護老人ホームの費用を具体的に確認する

特別養護老人ホームの費用は、介護保険法の「基準費用額」として国が一定の基準を定めています。厚生労働省のページを確認すると、2024年度の基準費用額は以下のように記載されています。

  • 食費:月額約4万3,000円(1日1,392円)
  • 居住費(多床室):月額約9,000円(1日282円)
  • 居住費(従来型個室):月額約3万2,000円(1日1,069円)
  • 居住費(ユニット型個室):月額約6万円(1日2,006円)

これに介護保険の自己負担(1〜3割)が加わります。要介護3の方が多床室に入居した場合の目安は、月額7万〜9万円程度です。ただし、この金額は「基準費用額」であり、実際には施設ごとに異なります。


都道府県別の費用差の実態を調べてみると

老人ホームの費用には、地域による大きな差があります。厚生労働省の介護サービス施設・事業所調査や各都道府県の「高齢者保健福祉計画」のデータを調べてみると、特に有料老人ホームにおいて都道府県間の費用差が顕著です。

地域別・月額費用の傾向(有料老人ホーム)

地域区分 月額費用の目安(介護付き有料) 特徴
東京都・神奈川県 25万〜50万円以上 土地代・人件費が高く、高額帯が多い
大阪府・愛知県 18万〜35万円 都市部は高め、郊外は比較的安い
北海道・東北地方 12万〜22万円 公的施設が充実・民間も抑えめ
九州・四国・中国地方 10万〜20万円 全体的に費用水準が低い
沖縄県 10万〜18万円 全国でも比較的低水準

この差が生まれる主な理由は、土地の取得費・建設費の差、介護職員の人件費の地域差、そして自治体の補助制度の有無です。

なぜ東京と地方でこれほど差があるのか

東京都の有料老人ホームは、土地代だけで建設コストに大きな差がついています。厚生労働省の「介護経営実態調査」を確認すると、介護付き有料老人ホームの「1人あたり設備投資額」は、都市部と地方で1.5〜2倍の開きがあることが示されています。

加えて、介護職員の賃金水準も地域によって異なります。東京都の最低賃金は全国で最も高く、それが施設の運営コスト、さらに利用料金に反映されています。

一方、地方では自治体が独自の補助金や施設整備支援を行っているケースがあります。特に人口減少が進む地方では、特別養護老人ホームの待機者が少なく、入居しやすい状況もあります。


月額費用の内訳を分解すると見えてくること

「月額15万円」という数字だけを見ても、何にいくらかかっているのかがわかりません。費用の内訳を把握しておくと、どこで費用を抑えられるかが見えてきます。

介護保険の自己負担割合を確認する

介護保険の自己負担割合は、収入と資産によって1割・2割・3割の3段階があります。厚生労働省のページを確認すると、2割・3割負担の対象となる条件は以下のように記載されています。

  • 2割負担:本人の合計所得金額が160万円以上(単身の場合)
  • 3割負担:本人の合計所得金額が220万円以上(単身の場合)

年金収入のみの方は、多くの場合1割負担に該当します。ただし、遺族年金や障害年金は合計所得に含まれないため、実際の負担割合は市区町村の窓口で確認するのが確実です。

「補足給付(特定入所者介護サービス費)」という制度がある

所得・資産が一定水準以下の方には、居住費と食費を軽減する「補足給付」という制度があります。厚生労働省の介護保険法に基づく制度で、負担限度額認定証を取得することで、居住費・食費の自己負担が大幅に下がります。

負担限度額の段階 対象の目安 居住費の上限(ユニット型個室)
第1段階 生活保護受給者等 月約2万5,000円
第2段階 世帯全員が市町村民税非課税で、年金収入等80万円以下 月約2万5,000円
第3段階① 世帯全員が市町村民税非課税で、年金収入等80〜120万円以下 月約4万5,000円
第3段階② 世帯全員が市町村民税非課税で、年金収入等120万円超 月約6万円
対象外(基準費用額) 市町村民税課税者など 月約6万円(上限なし)

補足給付を受けると、特別養護老人ホームの月額費用は第2段階で月5万〜7万円程度まで下がるケースがあります。この制度を知らずに全額自己負担で払い続けている方が、実は少なくありません。申請しなければ受けられない制度なので、市区町村の窓口への確認が必須です。


実際にかかった費用の例:相談者のケースから

これまでの内容を、実際の事例に当てはめて考えてみます。

田中さん(67歳・埼玉県在住)の場合

田中さんのお母様(91歳)が自宅での生活が難しくなり、施設入居を検討されました。お母様の介護度は要介護3。年金収入は月約10万円、預貯金は300万円ほどです。

最初に近隣の介護付き有料老人ホームを見学したところ、月額の費用は18万〜22万円。「年金だけでは到底払えない。でも特別養護老人ホームは何年待つかわからない」と途方に暮れていたそうです。

担当のケアマネジャーに相談したところ、2つのことがわかりました。

ひとつは、埼玉県内でも都心から離れた市区町村では、月額12万〜14万円程度の特別養護老人ホームがあり、待機期間も比較的短いケースがあるということ。もうひとつは、お母様の収入・資産の状況から「補足給付」の対象になる可能性が高く、居住費と食費の自己負担が大幅に下がる見込みがあるということでした。

補足給付の申請と、エリアを少し広げた施設探しを並行したところ、入居から4ヶ月後に月額費用を約9万5,000円まで抑えることができました。「最初の見積もりより毎月10万円近く違う。知っているかどうかでここまで変わるとは思っていなかった」と話されていました。


費用を抑えるための3ステップ

老人ホームの費用は、選び方と制度の活用次第で大きく変わります。以下の3ステップを参考にしてください。

ステップ1:施設の種類と希望条件を整理する

最初に、どの種類の施設が合っているかを整理します。介護度・医療ニーズ・入居の急ぎ度・予算の優先順位を書き出してみてください。

  • 要介護3以上で費用を抑えたい → 特別養護老人ホームが第一候補
  • 在宅復帰を目指したい → 介護老人保健施設を検討
  • 認知症の症状がある → グループホームが選択肢に入る
  • 入居を急ぐ必要がある → 有料老人ホームやサ高住も候補に

注意点:「とにかく早く入れたい」という気持ちから、費用の高い施設を安易に選ぶと、長期間にわたる家計の負担につながります。複数の種類を並行して探すことが重要です。

ステップ2:補足給付・高額介護サービス費の申請資格を確認する

費用を抑える制度として、以下の2つが特に重要です。

補足給付(特定入所者介護サービス費):前述のとおり、所得・資産が一定以下の方の居住費・食費を軽減します。市区町村の介護保険担当窓口に「負担限度額認定」の申請をします。

高額介護サービス費:1ヶ月に支払った介護サービスの自己負担額が一定の上限を超えた場合、超過分が払い戻される制度です。厚生労働省のページを確認すると、2024年現在の上限額は、一般的な所得の方で月額44,400円と記載されています。

どちらの制度も申請しなければ受け取れません。担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに相談すると、申請の手順を案内してもらえます。

注意点:補足給付は預貯金額の審査があります。単身の場合、貯金が1,000万円を超えると対象外になる可能性があります。資産状況も含めて事前に確認しておきましょう。

ステップ3:複数の施設を比較し、見学・体験入居を行う

費用の計算ができたら、候補の施設を複数見学します。パンフレットの月額費用には含まれていない「加算費用」が施設ごとに異なるため、見学時に必ず「月額の総額は何円になるか」を書面で確認してください。

体験入居を受け付けている施設も多くあります。1〜3日の体験入居で、食事の質・スタッフの対応・他の入居者の様子を直接確認することができます。費用は1泊数千円〜1万円程度が多いです。

注意点:入居一時金が高額な施設では、短期間での退去時の返金ルール(初期償却率・返金保証期間)も必ず確認します。入居後3ヶ月以内に退去した場合の返金額が、施設によって大きく異なります。


よくある質問

Q:特別養護老人ホームはどのくらい待つのか

地域によって大きく異なります。東京都の調査では、特別養護老人ホームの待機者数が依然として数万人規模に上ることが報告されています。都市部では数年待ちになるケースもある一方、地方では比較的早く入居できる施設もあります。

申込みは複数の施設に同時に行えます。「どこかひとつに申し込んで待つ」ではなく、希望エリアの複数施設に申込みをしておくことが実際の対応として一般的です。待機期間中は、在宅介護サービスや短期入所(ショートステイ)を活用して対応します。

Q:介護保険が適用されない施設はあるか

「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」の一部は、賃貸住宅として区分されているため、建物の家賃部分には介護保険が適用されません。介護保険の給付が受けられるのは、訪問介護などの居宅サービスの部分だけです。

介護付き有料老人ホームは、「特定施設入居者生活介護」として介護保険の認定を受けているため、介護サービスの部分は介護保険の対象になります。施設の種類と介護保険の適用範囲をあらかじめ確認することが重要です。

Q:家族が遠方に住んでいる場合、どの地域の施設を選べばよいか

費用面だけを考えると、地方の施設が安い傾向がありますが、入居後の面会・緊急時の対応を考えると、家族が通いやすい距離の施設を選ぶことが現実的です。

公益財団法人生命保険文化センターの調査を確認すると、施設選びで重視する項目の上位には「職員の対応」「医療体制」「家族が通いやすい立地」が挙げられています。費用の安さだけを優先して遠方の施設を選ぶと、緊急時に家族が駆けつけられない、定期的な面会が難しくなるといった問題が生じることがあります。


地域別の特徴をさらに詳しく:主な都道府県の状況

都道府県によって、施設の整備状況や利用できる制度にも違いがあります。以下に主な都道府県の傾向をまとめます。

都道府県 有料老人ホームの月額目安 特養の待機状況 特記事項
東京都 25万〜50万円以上 待機数が多い 都独自の補助制度あり
神奈川県 20万〜40万円 やや多い 横浜・川崎は特に高め
大阪府 15万〜30万円 中程度 公営施設の整備が進んでいる
愛知県 14万〜28万円 中程度 名古屋市内は高め
北海道 10万〜20万円 地域差大 過疎地は施設が少ない
福岡県 12万〜22万円 少なめ 九州圏で施設選択肢多い
沖縄県 10万〜18万円 少なめ 全国でも費用水準が低い

このデータはあくまでも目安です。同じ都道府県内でも、市区町村・立地・施設の設備水準によって費用は大きく変わります。実際の費用確認には、各施設への直接問合せが必要です。


施設探しのツールと相談先

老人ホームの情報収集と選択を進める際には、以下の方法が有効です。

地域包括支援センター:市区町村が設置している相談窓口です。地域の施設情報・補助制度・ケアマネジャーの紹介など、幅広く相談できます。利用は無料です。

介護比較サービス:「みんなの介護」「いい介護」など、施設の費用・設備・口コミを横断比較できるウェブサービスがあります。希望条件を入力すると、条件に合う施設をまとめて確認できます。資料請求や見学の予約も一括でできるため、複数施設の比較を効率的に行えます。

担当ケアマネジャー:すでに介護保険の認定を受けている方は、担当ケアマネジャーが施設選びの相談に乗ってくれます。地域の施設事情に詳しいため、費用・待機期間・施設の特徴について具体的なアドバイスを受けられます。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

老人ホームの費用の問題は、知っているかどうかだけで、結果が大きく変わります。

難しい制度のなかで、正しい情報を手に入れることがどれほど大切か、

日々の記事執筆を通じて痛感しています。

この記事が、あなたの生活を少しでも楽にするきっかけになれば嬉しいです。

これからも、あなたの生活防衛に役立つ情報を発信し続けます。

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