訪問看護を使いたいけれど、費用がいくらかかるのか、まったく見当がつかない。
そう感じている方は、きっと少なくないと思います。
わたしたちが厚生労働省の「訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定に関する基準」を確認してみると、介護保険と医療保険でまったく異なる計算方法が定められていました。制度が2本立てになっているため、「どちらが適用されるのか」から調べなければならないのです。
この記事では、訪問看護の費用について次のことを調べた結果をお伝えします。
- 1回あたりの費用相場(介護保険・医療保険それぞれ)
- 介護保険と医療保険のどちらが適用されるかの判断基準
- 月額費用のシミュレーション(ケース別)
- ケアマネジャーとの連携方法と費用を抑えるステップ
なぜ訪問看護の費用はこんなにわかりにくいのか
介護の制度を調べていると、「訪問看護は介護保険でも医療保険でも使える」という説明によく出くわします。ところが、どちらを使うかで費用の計算方法がまったく違います。さらに、要介護度や利用時間、自己負担割合によっても金額が変わるため、「いくらかかるのか」を一言で答えるのが難しい仕組みになっています。
本来であれば、ケアマネジャーや医師から「あなたの場合はこのくらいかかります」と一覧で教えてもらえるはずです。しかし現実には、利用者側が「介護保険」と「医療保険」の二重構造を理解していないと、想定外の請求が来ることもあります。
ただ、制度の構造を一度理解してしまえば、あとは自分のケースに当てはめるだけです。知っていれば対処できます。一緒に確認していきましょう。
訪問看護の費用の基本:1回あたりの相場を調べました
厚生労働省が公表している「訪問看護療養費の算定基準」と「介護報酬の算定基準」の2つを開いて確認しました。以下に、それぞれの費用の仕組みをまとめます。
介護保険を使った場合の費用
介護保険で訪問看護を利用する場合、費用は「単位数」で決まります。1単位はおおよそ10円(地域によって10.00〜11.40円)です。以下が訪問看護ステーションを利用した場合の基本的な単位数です(2024年度改定後の値)。
| 訪問時間 | 基本単位数 | 費用目安(10円換算) | 自己負担1割 | 自己負担2割 |
| 20分未満 | 313単位 | 約3,130円 | 約313円 | 約626円 |
| 30分未満 | 470単位 | 約4,700円 | 約470円 | 約940円 |
| 30分以上60分未満 | 821単位 | 約8,210円 | 約821円 | 約1,642円 |
| 60分以上90分未満 | 1,125単位 | 約11,250円 | 約1,125円 | 約2,250円 |
上記に加え、夜間・早朝の加算(25%増)や緊急時訪問加算などが上乗せされます。実際の1回あたりの自己負担は、加算込みで1,000〜3,500円程度になることが多いです。
また、要支援1・2の方は「介護予防訪問看護」として同じ枠組みで利用できます。ただし、ケアプランの中でサービスの調整が必要になります。
医療保険を使った場合の費用
医療保険を使う場合、費用の仕組みは介護保険と異なります。厚生労働省の「訪問看護療養費に係る算定基準」を確認すると、看護師等による訪問の場合の基本費用は以下のとおりです。
| 区分 | 1日あたりの費用 | 自己負担1割 | 自己負担3割 |
| 訪問看護療養費(週3日まで) | 5,550円 | 555円 | 1,665円 |
| 訪問看護療養費(週4日目以降・特定疾患等) | 6,550円 | 655円 | 1,965円 |
| 精神科訪問看護(週3日まで) | 5,600円 | 560円 | 1,680円 |
70歳以上の方は原則1割負担(現役並み所得者は3割)です。70歳未満の方は3割負担が基本となります。
自己負担割合の仕組み
介護保険の自己負担割合は、前年の所得によって決まります。
| 自己負担割合 | 対象者 |
| 1割 | 一般的な所得の方 |
| 2割 | 一定以上の所得がある方(単身で年収280万円以上など) |
| 3割 | 現役並みの所得がある方(単身で年収383万円以上など) |
自分の負担割合は「介護保険負担割合証」に記載されています。手元にない場合は、お住まいの市区町村の介護保険担当窓口で確認できます。
介護保険と医療保険、どちらが適用されるのか
「介護保険と医療保険のどちらを使うのか」は、利用者が選べるわけではありません。条件によって自動的に決まります。
介護保険が適用されるケース
介護保険が優先されるのは、以下の条件をすべて満たす場合です。
- 65歳以上で要介護1〜5または要支援1・2の認定を受けている
- 40〜64歳でも、特定疾病(16種類)による要介護認定を受けている
この場合、基本的に介護保険が優先されます。医療保険での訪問看護は原則使えません。
ただし例外があります。医師が「特別訪問看護指示書」を交付した場合(月1回・連続14日まで)は、介護保険の認定を受けていても医療保険での訪問看護が可能になります。急性増悪時や退院直後の集中的なケアが必要な時期に活用されます。
医療保険が適用されるケース
以下のいずれかに当てはまる場合は、医療保険で訪問看護を利用します。
- 要介護認定を受けていない(または認定申請前の)方
- 40歳未満の方
- 以下の疾患・状態に該当する方(介護保険認定を受けていても医療保険優先)
| 医療保険優先となる主な疾患・状態 |
| がん(末期) |
| 筋萎縮性側索硬化症(ALS) |
| 多発性硬化症 |
| 重症筋無力症 |
| スモン |
| 筋ジストロフィー |
| 脊髄小脳変性症 |
| ハンチントン病 |
| パーキンソン病関連疾患 |
| 難病患者等で主治医が認めた場合 |
上記の疾患に該当する場合、週3日を超えて訪問看護を利用できる特例があります。厚生労働省の「厚生労働大臣が定める疾病等」のリスト(告示第17号)を確認すると、全20疾患が記載されていました。
両方の保険が重なるときのルール
「介護保険の認定もあるが、難病の診断もある」というケースでは、医療保険が優先されます。どちらが適用されるか迷った場合は、担当のケアマネジャーか主治医に確認することをおすすめします。
月額費用シミュレーション(ケース別)
実際に月いくらかかるのか、ケース別で試算しました。
ケース1:週2回・30分程度の利用(要介護2・1割負担)
要介護2で介護保険を利用し、週2回・1回30分以上60分未満の訪問を受けるケースです。
| 項目 | 計算 |
| 1回あたりの費用 | 821単位 × 10円 = 8,210円 |
| 月の訪問回数(週2回) | 約8回 |
| 月の総額 | 8,210円 × 8回 = 65,680円 |
| 自己負担(1割) | 6,568円/月 |
月6,568円が自己負担額の目安です。ただし、夜間加算や複数の看護師が同時訪問する場合はさらに加算されます。
要介護2の支給限度額は月19万4,800単位相当(約19万4,800円)です。訪問看護だけで上限に達することはほとんどありませんが、他のサービスと合わせて管理する必要があります。
ケース2:週3回・60分の利用(要介護4・2割負担)
要介護4で、週3回・1回60分以上90分未満のケースです。
| 項目 | 計算 |
| 1回あたりの費用 | 1,125単位 × 10円 = 11,250円 |
| 月の訪問回数(週3回) | 約12回 |
| 月の総額 | 11,250円 × 12回 = 135,000円 |
| 自己負担(2割) | 27,000円/月 |
2割負担の場合、月27,000円程度の自己負担が生じます。ただし、後述する「高額介護サービス費」が適用されると実際の負担はさらに下がります。
高額介護サービス費制度を使えばさらに安くなる
介護保険には「高額介護サービス費」という制度があります。一定額を超えた部分は払い戻しを受けられます。
| 区分 | 上限額(月額) |
| 課税所得380万円以上 | 44,400円 |
| 課税所得145万円以上380万円未満 | 44,400円 |
| 市町村民税課税世帯 | 44,400円 |
| 市町村民税非課税世帯 | 24,600円 |
| 本人の合計所得・収入の合計が一定未満 | 15,000円(個人) |
たとえば、非課税世帯の方が月4万円の介護サービス費を支払った場合、2万4,600円を超えた分(15,400円)が後から返ってきます。申請は市区町村の介護保険担当課で行えます。
ケアマネジャーとの連携でできること
訪問看護を介護保険で利用するには、ケアマネジャー(介護支援専門員)との連携が不可欠です。
ケアプランへの組み込み方
ケアプランへの訪問看護の追加は、次のような流れで進みます。
1. 本人または家族が「訪問看護を使いたい」とケアマネジャーに伝える
2. ケアマネジャーが状態を確認し、必要性を判断する
3. 主治医に「訪問看護指示書」の作成を依頼する(指示書がなければ利用できません)
4. 訪問看護ステーションと契約し、ケアプランに追加する
5. 利用開始
この流れの中で、主治医が作成する「訪問看護指示書」は必須です。指示書のない訪問看護は、介護保険でも医療保険でも認められません。厚生労働省の通知(「訪問看護ステーションの基準に係る取扱細則」)にもこの点が明記されています。
訪問看護ステーションの選び方
訪問看護ステーションは全国に約1万5,000か所以上あります(厚生労働省「介護サービス施設・事業所調査」令和4年度版より)。ケアマネジャーがいくつか候補を提案してくれますが、最終的には家族が選ぶことができます。
選ぶ際に確認したいポイントをリストにまとめました。
- 24時間対応が可能かどうか(緊急時に電話で相談できるか)
- 自宅までの距離(訪問時間に影響する)
- 得意な疾患・ケアの種類(リハビリ対応・医療的ケア対応など)
- スタッフの人数と担当者の交代頻度
- 口コミ・評判(地域の包括支援センターに聞くのが早い)
【事例】田中さん(67歳・埼玉県在住)の場合
田中さんは67歳の男性で、脳梗塞の後遺症で左半身に麻痺が残っています。要介護2の認定を受けており、自宅で奥様と二人暮らしをしています。退院直後から訪問リハビリを週2回使っていましたが、傷の処置や服薬管理のために「訪問看護も必要ではないか」とケアマネジャーから提案されました。
最初、田中さんの奥様は「また費用が増えるのでは」と不安でした。ケアマネジャーに確認したところ、田中さんの場合は介護保険の1割負担で、週2回・30分未満の訪問なら月あたり約3,760円(470単位×10円×8回×1割)という試算が出ました。
さらにケアマネジャーから「田中さんの世帯は非課税なので、高額介護サービス費の上限が月1万5,000円になります。既に使っているリハビリと合わせても上限を超えることはないでしょう」と教えてもらいました。
主治医に訪問看護指示書を書いてもらい、ケアマネジャーが紹介してくれた近くの訪問看護ステーションと契約。利用開始から2か月後には、傷の状態が安定し、奥様の介護負担も軽減されたと話しています。「費用がはっきりわかってから相談できたのがよかった」と奥様は振り返っていました。
訪問看護を利用するための3つのステップ
ステップ1:主治医に「訪問看護指示書」を書いてもらう(所要時間:1〜2週間)
訪問看護を利用するには、主治医の指示書が必ず必要です。かかりつけ医に「訪問看護を使いたい」と伝えると、指示書を作成してもらえます。費用は原則かかりません(医療機関によっては文書料として数百円かかる場合があります)。
落とし穴:指示書には有効期間があります。医療保険の場合は最長6か月、特別訪問看護指示書は14日間です。期限が切れると訪問看護が続けられなくなるため、更新を忘れないようにしましょう。
ステップ2:ケアマネジャーに連絡してケアプランに追加してもらう(所要時間:1〜2週間)
担当のケアマネジャーに「訪問看護を使いたい」と連絡します。ケアマネジャーがケアプランを修正し、訪問看護ステーションとの調整をしてくれます。ケアプランの作成・変更にかかる費用は無料です(全額介護保険でカバーされます)。
落とし穴:ケアマネジャーがいない場合は、地域包括支援センターへ相談してください。センターの所在地は市区町村のHPで「地域包括支援センター (市区町村名)」と検索すると出てきます。
ステップ3:いい介護の無料相談窓口を活用する
「費用の計算が複雑でよくわからない」「近くにいいステーションがあるか知りたい」という場合は、いい介護の無料相談窓口を活用する方法があります。電話やオンラインで専門のアドバイザーに相談でき、費用の試算や近隣のサービス情報を提供してもらえます。
特に訪問看護とほかの介護サービスを組み合わせたいときは、全体の費用感を把握するのに役立ちます。
落とし穴:無料相談はあくまでも情報提供です。実際の費用確定や契約はケアマネジャーと訪問看護ステーションを通じて行います。相談結果はメモしておき、ケアマネジャーに伝えるとスムーズです。
よくある質問
Q. 訪問看護は毎日使えますか?
介護保険での訪問看護は、原則として週に何回でも利用できます(支給限度額の範囲内)。ただし、医療保険での訪問看護は原則週3日まで(月に12日まで)という上限があります。特定疾患や主治医が「週4日以上必要」と判断した場合は、上限の特例が適用されます。
毎日の訪問が必要な場合は、介護保険の認定を受けた上でケアプランに組み込むのが一般的です。
Q. 医療保険の訪問看護は要介護認定がなくても使えますか?
はい、使えます。医療保険の訪問看護は要介護認定の有無に関係なく利用できます。ただし、主治医が「訪問看護が必要」と判断し、訪問看護指示書を交付することが条件です。40歳未満の方、要介護認定を申請していない方、入院から退院直後の方なども対象になります。
Q. 訪問看護ステーションの費用は一律ですか?
介護保険が適用される場合、単位数は全国一律ですが、1単位あたりの単価が地域によって異なります(10.00〜11.40円)。そのため、同じ時間・回数でも都市部のほうがわずかに高くなる場合があります。医療保険の場合も地域差はありますが、基本的な費用は全国ほぼ同額です。また、ステーションによって独自の加算をつける場合がありますので、契約前に費用明細を確認することをおすすめします。
まとめ
訪問看護の費用は、介護保険と医療保険のどちらが適用されるかで計算方法が変わります。介護保険を使う場合、1回あたりの自己負担は1割負担で313円〜1,125円(加算込みで1,000〜3,500円程度)が目安です。月額では週2回・30分程度なら月6,000〜7,000円前後、週3回・60分なら月2万〜3万円程度になります。
高額介護サービス費の制度を活用すれば、一定額を超えた分は後から払い戻しを受けられます。まずはケアマネジャーに相談し、主治医から指示書をもらうことが第一歩です。費用の見通しが立たないときは、いい介護の無料相談窓口への問い合わせも有効な選択肢です。
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最後まで読んでいただきありがとうございます。
訪問看護の費用の問題は、知っているかどうかだけで、結果が大きく変わります。
難しい制度のなかで、正しい情報を手に入れることがどれほど大切か、
日々の記事執筆を通じて痛感しています。
この記事が、あなたの生活を少しでも楽にするきっかけになれば嬉しいです。
これからも、あなたの生活防衛に役立つ情報を発信し続けます。


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