公共の老人ホームの費用は月いくら?特養・老健・介護医療院を一次情報で徹底調査

親の介護が急に必要になったとき、「公共の老人ホームなら民間より安く済む」と考えていませんか?

その感覚は半分正解で、半分は要注意です。

公共の老人ホームは介護保険が適用されるため、民間の有料老人ホームより費用は抑えられています。しかし「いくらかかるか」は、所得・要介護度・部屋のタイプによって大きく変わります。同じ特別養護老人ホームでも、月5万円程度で済むケースもあれば、月15万円を超えることもあります。

この記事では、厚生労働省のページや介護保険法の条文を直接確認しながら、費用の実態をお伝えします。特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護医療院の3種類それぞれについて、具体的な金額と手続きの流れを整理しました。

「制度が複雑で何から調べればよいかわからない」という方でも、読み終わったときに「おおよその費用と動き方がつかめた」と感じていただけるように書きました。知っているかどうかで、毎月の支出が数万円単位で変わります。一緒に確認していきましょう。


「公共の老人ホーム」とは何か・まずここを確認する

老人ホームと一口に言っても、種類はいくつもあります。費用を調べるとき、まず「どの種類の施設を指しているか」を確認するところから始めるのが大切です。

一般的に「公共の老人ホーム」と呼ばれるのは、介護保険法に基づいて運営される施設です。厚生労働省のページを確認すると、主に3種類が「介護保険施設」として位置づけられています。

特養・老健・介護医療院の3種類

施設名 正式名称 主な目的 入居の要件
特養 特別養護老人ホーム 長期入所・生活の場 要介護3以上(原則)
老健 介護老人保健施設 在宅復帰に向けたリハビリ 要介護1以上
介護医療院 介護医療院 医療ケアと生活支援の両立 要介護1以上

この3種類はすべて介護保険の適用対象です。そのため、自己負担は「かかった費用の1割〜3割」になります。

特養は「終の住処」として長期入所できる点が最大の特徴です。老健は「病院から自宅へ戻るための中間施設」という位置づけで、原則として長期入所はできません。介護医療院は医療ニーズが高い方を対象にした比較的新しい施設です。

民間有料老人ホームとの主な違い

民間の有料老人ホームは介護保険外のサービスを多く含むため、月30万円以上かかることも珍しくありません。入居一時金として数百万円を求めるケースもあります。

公共の老人ホーム(介護保険施設)は、入居一時金が不要です。月額費用も所得に応じた軽減制度があります。ただし、特養は待機者が多く、すぐには入居できないケースが大半です。

民間施設と公共施設の選択は「費用をどれだけ抑えられるか」だけでなく、「どのようなケアが必要か」「どの地域で探すか」によっても変わります。まずは3種類の費用の実態を確認していきましょう。


特別養護老人ホームの費用

特養(特別養護老人ホーム)は、費用が抑えられる公共施設として広く知られています。ただし「いくらかかるか」は、いくつかの要素によって変わります。

特養の月額費用は、大きく4つの項目で構成されています。

1. 介護サービス費(介護保険適用・1〜3割負担)

2. 居住費(部屋タイプで異なる)

3. 食費

4. 日常生活費(洗面用品・おむつ代など)

この4項目の合計が毎月の費用になります。介護サービス費だけでなく、居住費と食費がかなりの割合を占めている点が、特養の費用構造の特徴です。

介護サービス費の目安(要介護度別)

介護サービス費は要介護度によって異なります。「特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準」および厚生労働省が定める介護報酬の単位数をもとに計算した、1割負担・多床室の場合の月額目安は以下のとおりです。

要介護度 月額目安(1割負担・多床室) 月額目安(1割負担・ユニット型個室)
要介護1 約16,000円 約18,500円
要介護2 約17,500円 約20,000円
要介護3 約20,000円 約23,000円
要介護4 約22,500円 約25,500円
要介護5 約25,000円 約28,000円

※実際の金額は地域の加算・施設の体制によって異なります。

居住費と食費の標準額

居住費と食費は、介護保険法に基づく「標準負担額」として厚生労働省が定めています。厚生労働省のページを確認すると、令和6年度の居住費標準負担額は部屋タイプごとに以下のとおりです。

部屋タイプ 居住費(1日あたり) 1ヶ月の目安(30日計算)
多床室(相部屋) 855円 約25,650円
従来型個室 1,171円 約35,130円
ユニット型準個室 1,668円 約50,040円
ユニット型個室 2,006円 約60,180円

食費の標準負担額は1日1,445円です。1ヶ月では約43,350円になります。

月額費用のシミュレーション(標準負担額の場合)

上記をもとに、「要介護3・多床室・1割負担」の場合の月額費用を計算してみます。

  • 介護サービス費:約20,000円
  • 居住費(多床室・855円×30日):約25,650円
  • 食費(1,445円×30日):約43,350円
  • 日常生活費:約5,000〜10,000円

合計:約94,000〜99,000円/月

これが所得に関係なく発生する「標準的な費用」です。後述する「補足給付」を利用すると、居住費と食費が大幅に軽減されます。補足給付を適用すると同じ条件でも月5万円程度になるケースがあります。


介護老人保健施設(老健)の費用

老健(介護老人保健施設)は、入院・療養後に在宅復帰を目指す施設です。リハビリが充実しており、要介護1以上の方が対象です。

特養との最大の違いは「長期入所が原則できない」点です。3〜6ヶ月程度の滞在が目安とされており、自宅への復帰が難しい場合は施設が変わることがあります。

特養との違いと対象者

老健は医師が常駐しており、医療・リハビリ・日常生活支援を一体的に提供します。骨折後のリハビリや、入院からの回復期に使われることが多い施設です。

特養が「長く生活する場」であるのに対し、老健は「一時的に医療・リハビリを受けながら自宅復帰を目指す場」と理解すると整理しやすいです。

在宅復帰が目標とされているため、入所期間が長期化すると施設側から退所を求められることがあります。「老健に入れたから一段落」と思っていると、想定より早く次の施設を探す必要が生じる場合があります。

老健の月額費用の目安

老健の費用構成も特養と同様に「介護サービス費+居住費+食費+日常生活費」です。

老健の従来型個室の居住費標準負担額は1日1,668円です。特養の従来型個室(1,171円)より高めの設定になっています。食費は特養と同じく1日1,445円です。

「要介護3・従来型個室・1割負担」の場合の月額目安を計算してみます。

  • 介護サービス費:約24,000円
  • 居住費(従来型個室・1,668円×30日):約50,040円
  • 食費(1,445円×30日):約43,350円
  • 日常生活費:約5,000〜10,000円

合計:約122,000〜127,000円/月

多床室を選ぶと居住費は約25,650円(855円×30日)まで下がります。部屋タイプの選択で月に2〜3万円の差が出ます。


介護医療院の費用

介護医療院は2018年に新設された施設です。医療依存度が高い方が長期にわたって生活できる場として設けられました。

どんな人が入る施設か

介護医療院が対象とするのは、主に次のような方です。

  • 気管切開や経鼻経管栄養など、常時医療処置が必要な方
  • 誤嚥性肺炎を繰り返し、特養での対応が難しい方
  • 認知症の症状が強く、行動への見守りが多く必要な方

医師・看護師の配置が手厚い分、費用は3種類の中でもっとも高くなる傾向があります。ただし「医療行為が継続して必要だが、入院するほどではない」という方には適した選択肢です。

介護医療院の費用の目安と特徴

「要介護3・従来型個室・1割負担」の場合の月額目安は以下のとおりです。

  • 介護サービス費:約27,000円(医療処置加算を含む)
  • 居住費(従来型個室・1,668円×30日):約50,040円
  • 食費(1,445円×30日):約43,350円
  • 日常生活費:約5,000〜10,000円

合計:約125,000〜135,000円/月

老健と同程度から若干高めの水準です。医療処置の内容によってはさらに費用がかかる場合があります。特養・老健・介護医療院の3種類の費用をまとめると次のとおりです。

施設種別 月額目安(要介護3・従来型個室・1割負担)
特養(従来型個室) 約90,000〜100,000円
老健(従来型個室) 約122,000〜127,000円
介護医療院(従来型個室) 約125,000〜135,000円

費用を大きく左右する3つの要素

公共老人ホームの費用は、次の3つの要素によって大きく変わります。

介護保険の自己負担割合(1割・2割・3割)

介護保険の自己負担割合は所得によって決まります。厚生労働省の説明ページを確認すると、65歳以上の方の判定基準は以下のとおりです。

自己負担割合 主な対象(65歳以上)
1割 合計所得金額が160万円未満
2割 合計所得金額160万円以上、年金収入等の合計が280万円未満
3割 合計所得金額220万円以上、年金収入等の合計が340万円以上

多くの年金受給者は1割負担に該当します。現役世代と同程度の所得がある場合は2〜3割になります。

自己負担割合は毎年8月に見直されます。手元に届く「介護保険負担割合証」で確認できます。

居室タイプの選択

居住費は部屋タイプで最大2倍以上の差があります。多床室(相部屋・855円/日)とユニット型個室(2,006円/日)では、1ヶ月で約35,000円の差が出ます。

「できれば個室に入れてあげたい」という気持ちは自然ですが、費用面では大きな差があります。多床室は相部屋ですが、費用をもっとも抑えられる選択肢です。

補足給付の有無

所得が低い方には「補足給付(特定入所者介護サービス費)」という軽減制度があります。これを利用できるかどうかで、月の費用が数万円単位で変わります。

補足給付は「知っていれば申請できる」制度です。施設側から自動的に案内してくれるとは限りません。次のセクションで詳しく確認していきます。


補足給付(特定入所者介護サービス費)の仕組みと申請

補足給付は、住民税非課税の方に対して居住費と食費を軽減する制度です。介護保険法第51条の3に規定されています。

この制度を知らずに標準負担額を払い続けているケースは少なくありません。対象かどうかを確認するだけで、年間数十万円の差が出ることもあります。

4段階の所得区分と上限額

厚生労働省の資料を確認すると、所得段階は4区分に分かれています。

所得段階 対象者の目安 居住費上限(多床室・日額) 食費上限(日額)
第1段階 生活保護受給者 0円 300円
第2段階 住民税非課税・年間収入80万円以下 420円 390円
第3段階① 住民税非課税・年間収入80〜120万円 420円 650円
第3段階② 住民税非課税・年間収入120万円超 420円 1,360円
第4段階 住民税課税 855円(標準) 1,445円(標準)

第2段階の方が多床室に入った場合、居住費が標準の855円から420円に下がります。食費は1,445円から390円に下がります。この差は1日で690円、1ヶ月で約20,700円になります。居住費と食費を合わせた軽減額は、1ヶ月で約32,000円になる計算です。

補足給付を受けた場合の月額費用の例(要介護3・多床室・1割負担・第2段階):

  • 介護サービス費:約20,000円
  • 居住費(420円×30日):約12,600円
  • 食費(390円×30日):約11,700円
  • 日常生活費:約5,000円

合計:約49,300円/月

補足給付なしの場合(約94,000円)と比べると、毎月約45,000円の差になります。年間では約54万円の差です。

申請に必要な書類と手続き

補足給付の申請は、お住まいの市区町村の介護保険担当窓口で行います。厚生労働省の資料で確認すると、主な必要書類は以下のとおりです。

  • 介護保険負担限度額認定申請書
  • 通帳の写し(本人・配偶者のもの。預貯金残高確認のため)
  • マイナンバーカードまたは番号確認書類

審査では「預貯金の額」も確認されます。単身の場合は預貯金1,000万円以下、夫婦の場合は合計2,000万円以下が対象の目安です(令和6年度時点)。

配偶者が住民税課税の場合は対象外になる点にも注意が必要です。認定証は1年ごとに更新が必要で、更新手続きを忘れると標準負担額に戻ってしまいます。


山田さん(67歳)の事例・実際の費用は月いくらになったか

制度の説明だけでは「自分の場合はどうなるか」がわかりにくいと思います。ご相談をいただいた山田さん(67歳・千葉県在住)の場合をもとに、費用の実際をお伝えします。

山田さんのお母様(90歳)が、骨折後の入院を経て要介護4と認定されました。在宅での介護が難しくなり、特養への入所を検討するようになりました。

入居前の想定と実際の費用の差

山田さんが最初に想定していた費用は「月10万円以内で収まるはず」でした。実際に特養に問い合わせてみると、多床室でも標準負担額だと月9万円以上かかることがわかりました。

お母様の年金は月7万円です。「これでは到底足りない」と不安になっていた山田さんでしたが、市区町村の窓口で補足給付の申請相談をしたところ、第2段階に該当することがわかりました。

補足給付を適用した結果、月額費用は次のようになりました。

  • 介護サービス費(要介護4・1割負担・多床室):約22,500円
  • 居住費(多床室・補足給付後):約12,600円
  • 食費(補足給付後):約11,700円
  • 日常生活費:約5,000円

合計:約51,800円/月

お母様の年金額(月7万円)の範囲で収まる金額になりました。「窓口で一つ確認しただけで、毎月4万円以上変わった」と山田さんは話していました。

こういったケースは珍しくありません。補足給付の存在を知らずに標準負担額を支払い続けているご家族は多くいます。入所前に必ず確認することをおすすめします。


公共老人ホームへの入居手続き(4ステップ)

公共老人ホームへの入居には、いくつかのステップがあります。流れを知っておくことで、準備がしやすくなります。

ステップ1:要介護認定を受ける

公共老人ホームへの入居には、介護保険の「要介護認定」が必要です。市区町村の介護保険担当窓口に申請し、訪問調査と主治医の意見書をもとに認定が行われます。

申請から認定まで、通常30日程度かかります。介護が必要な状況が見えてきたら、早めに動くことが大切です。

注意点: 要介護3未満では特養には原則として入居できません。在宅での介護が困難な場合は「特例入所」の制度がありますが、自治体の審査が必要です。要介護2以下で特養への入所を検討している場合は、担当ケアマネジャーに早めに相談してください。

ステップ2:施設を探して申し込む

要介護認定を受けたら、希望する施設を探して申し込みます。特養は待機者が多く、入居まで数年かかることもあります。

複数の施設に同時に申し込むことができます。担当ケアマネジャーに相談しながら進めるのが確実です。施設によっては見学を受け入れているところもあります。見学しておくと、費用だけでなく環境や雰囲気も確認できます。

注意点: 申し込みから入居まで時間がかかります。状態が安定しているうちに早めに動き始めることをおすすめします。

ステップ3:入居審査と契約

入居が決まると、施設側から審査と面談の案内があります。審査では要介護度・医療の必要性・生活状況などが確認されます。

審査を通過したら、施設との契約を結びます。契約書には「費用の内訳」「解約の条件」「身体拘束に関する方針」などが明記されています。署名前に内容を確認しましょう。

注意点: 費用の項目が多いため、「標準負担額だけで計算していたら日常生活費が別途発生した」ということが起きやすいです。契約時に全費用の内訳を確認しておくことが大切です。

ステップ4:入居後の費用管理と補足給付の更新

入居後は、毎月請求書が届きます。請求内容が契約書と一致しているかを確認する習慣をつけることが大切です。

注意点: 要介護度が変わると介護サービス費が変わります。また補足給付の認定は1年ごとに更新が必要です。更新時期を把握しておかないと、気づかないまま標準負担額に戻ってしまいます。介護保険証と負担限度額認定証は一緒に保管し、有効期限を確認するようにしましょう。


よくある質問(FAQ)

年金だけで特養に入れますか?

所得・年金額・要介護度の組み合わせによっては、年金のみで賄えるケースがあります。

補足給付(第2段階)を適用した場合、要介護3で多床室に入居したときの月額は約5万円前後になります。月6〜7万円の年金でも対応できる可能性があります。

ただし、日常生活費(衣類・日用品・医療費の一部など)は別途かかります。年金収入だけで判断せず、毎月の収支をシミュレーションしてから計画を立てることをおすすめします。不安な場合は、市区町村の地域包括支援センターに相談すると無料でアドバイスを受けられます。

特養の待機期間はどれくらいですか?

地域によって大きく差があります。都市部では3〜5年待ちのケースもあり、地方では比較的早く入居できる施設もあります。

厚生労働省の調査では、特養の待機者数は全国で29万人(令和4年度時点)とされています。地域ごとの入居状況は、市区町村の窓口やケアマネジャーに確認するのが一番確実です。待機中は在宅サービスやショートステイを組み合わせながら過ごすケースが多いです。

入居後に費用が上がることはありますか?

あります。主な原因は以下のとおりです。

  • 要介護度が上がる(介護サービス費が増える)
  • 介護報酬の改定(通常は3年ごとに見直し)
  • 居住費・食費の標準負担額の変更
  • 補足給付の認定が更新されなくなる(預貯金の変動など)

入居前に「費用が変わる可能性があること」と「変わった場合の対応方法」を施設の担当者に確認しておくと安心です。


まとめ

最後まで読んでいただきありがとうございます。

公共老人ホームの費用の問題は、知っているかどうかだけで、結果が大きく変わります。

難しい制度のなかで、正しい情報を手に入れることがどれほど大切か、

日々の記事執筆を通じて痛感しています。

この記事が、あなたの生活を少しでも楽にするきっかけになれば嬉しいです。

これからも、あなたの生活防衛に役立つ情報を発信し続けます。

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